立冬が過ぎ、少しずつ寒さが厳しくなってきました。
そんな初冬のある日、たくさんのイガグリが百々染工房に届きました。
栗と言えば、栗きんとんや栗ごはんといった、秋の味覚。
でも百々染工房で必要としているのは、ホクホク美味しい栗の実ではなく、外側の「イガ」の部分なのです。
今回、「栗のイガがたくさんあるから、採りに来て」と連絡をくれたのは、以前工房で一緒に染めの作業をしていた職員でした。
懐かしい人との久しぶりの再会に、つくり手たちもスタッフも思わず笑顔に。
一緒に楽しい時間を過ごし、箱いっぱいに拾ったイガを工房に持ち帰りました。
イガを煮出して作った染液は、濃い栗色になりました。
あまりにも濃い染液ができたので、ストールもこっくりとした栗色に染まるのかと思いきや、実際にストールを染めてみると、染液の濃さとは裏腹に、とても淡くて優しい、薄い栗色が入りました。
染めを重ねるごとに、少しずつ色が入っていくストール。
何度も何度も染めて、色を重ねて、丁寧に一枚のストールを仕上げていきます。
幾度にも染めた、栗のストール。まるで素朴な味わいの栗きんとんのような、まろやかで自然な色合いのストールに仕上がりました。
栗のイガで染めた、栗色のストールは、段々寒くなる季節に、秋の余韻を教えてくれるような存在になってくれるかもしれません。
寒さに負けないように着重ねていると、なんだかいつものモノトーンのコーディネートになってしまいがちな冬ですが、実りの秋を伝えてくれるこの栗色のストールをさっと巻いて、気分も明るく出かけてみてはいかがでしょうか。
(文/やじま)
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